東京地裁判決:匿名組合員に支払われた金員は利益分配として課税要件事実を充足

3-31-2017

匿名組合の営業者である破産会社(合同会社)が、組合員に利益の分配金として支払った金員が利益の分配か、
実際には出資の払戻しだったのかの判断が争われた事件で東京地裁(谷口豊裁判長)は、
営業者と組合員間で成立した契約上の権利義務と一致しないものであったとしても、
匿名組合契約に基づく利益の分配という課税要件事実の充足があったものとして課税することができると判断、破産管財人の訴えを斥けた。

 この事件は、集団投資スキームの営業者であった合同会社が破綻、匿名組合契約の下に利益の分配として組合員に金員を支払ったのが発端である。
これに対して原処分庁が源泉所得税の納税告知及び不納付加算税の賦課決定をしてきたため、破産管財人が
実際には出資の払戻しであって匿名組合契約に基づく利益の分配ではないことを理由に、源泉所得税の納付義務を負わないと反論した。
原処分の取消しを求めるとともに、納付済みの源泉所得税及び還付加算金の支払いを求めて提訴した事案である。

 破産管財人側は、運用益があるように仮装経理していたに過ぎなかったのであるから、出資の払戻しであるという主張をした。

 しかし判決は、匿名組合の利益の分配の意義に触れ所得税法上の利益の分配は商法と同義と解釈するとともに、
税法の見地からは課税の原因となった行為が厳密な法令の解釈適用から客観的評価において不適法・無効かどうかは問題ではなく、
課税の原因となった行為が関係当事者の間で有効に取り扱われ、現実に課税の要件事実が満たされる場合には、
その行為が有効なものとして租税を賦課徴収することは妨げられないと解釈した。

 匿名組合契約に基づく利益の分配の行為が、営業者の損益計算等に誤りがあるために当事者間で成立した契約上の権利義務と一致しないものであっても、
組合員に出資の払戻しではなく利益の分配として金銭を交付し組合員側も利益の分配として金銭を受領しているのであれば、
後に損益計算等の誤りが確認され、匿名組合の当事者間で課税要件事実の不充足が明らかになるなどの特段の事情がない限り、
利益の分配という課税要件事実を充足するものとして課税することができると解するのが相当であると判断、破産管財人の請求を棄却した。

 (2016.07.19東京地裁判決、平成26年(行ウ)第498号)

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